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医師・医療未来学者 奥真也氏に聞く医療の「今」と「これから」

医師・医療未来学者  奥真也氏に聞く医療の「今」と「これから」

奥 真也(おく しんや)
1962年、大阪府生まれ。医師、医学博士。経営学修士(MBA)。医療未来学者。東京大学医学部医学科卒業。英国レスター大学経営大学院修了。専門は医療未来学、放射線医学、核医学、医療情報学。東京大学医学部附属病院放射線科に入局後、フランス留学を経て、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター健診情報学講座准教授、会津大学教授などを歴任。その後、製薬会社、薬事コンサルティング会社、医療機器メーカーに勤務。主な著書に『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』(講談社)、『シリーズ14歳の世渡り術 未来の医療で働くあなたへ』(河出書房新社)など。

数学を志した青年が医学の道に転じた訳は?

――奥先生は中学生の頃から本書の発売元である東京出版の『大学への数学』の愛読者だったそうですね。

 数学が大好きな中高生でした。高2・3の時には『大学への数学』の難問である「宿題」を解くのが趣味で、硬式テニス部の部活の時間にもずっと考えているような高校生でした。模範解答として2、3度掲載してもらいましたが、テニスの試合に勝った時よりもうれしかったのを覚えています。

――そうした経緯もあり、ご自身はもちろん、友人もご両親も、奥先生は将来、数学者になるだろうと固く信じていたと著書に書かれています。実際、最初は東京大学教養学部理科一類に入学し、数学者への道を歩み始めました。しかし、翌年には理科三類を受験し直し、医師を目指すことに。

 大学でさまざまな授業を受けるうちに、他にも面白いものがあるんだなと思うようになりました。数学は相変わらず魅力的だったのですが、数学以外にも魅力的な学問がたくさんあることに気付かされました。その中でもひときわ興味をひかれたのが医学だったのです。高校生の頃に医師になろうと考えたことは一度もなかったのですが、医学が生命科学全般をつかさどる学問であること、専門領域が多岐にわたること、臨床医だけでなく研究者として多様な道があることなどを知り、悩みつつも方向転換しました。
 医師になってさまざまな仕事に携われたのも、医師免許を取得したからこそ。どの道が正しいかなんて分かりませんが、転身したことに後悔はありません。

AI医師の信頼性高まるいずれ無人クリニックも

――さて、ICT全般の技術革新やバイオサイエンスの進歩を受け、医療現場へAIやロボットをはじめとするさまざまなツールの導入が進んでいることは大きな関心事だと思います。
 奥先生は2021年10月、『シリーズ14歳の世渡り術 未来の医療で働くあなたへ』(ブックガイド1参照)という著書を上梓されました。その中に描かれている、2030年に中2生が近所のクリニックで診察を受ける様子が印象的です。受付や案内を担当するのはロボットで、診察するのはAI。病気はインフルエンザであることが分かり、会計はスマホで自動決済し、処方箋もスマホで受け取って、クリニックを後にするというものでした。

 2020年の段階で2030年の診察室の典型的な風景を予測したものですが、その本を刊行してからすでに3年。医療はさらに加速度をつけて進化しています。特に注目すべきはAIです。読者の中にも使ったことがある方もいると思いますが、ChatGPTに代表される生成系AIの威力は抜群ですね。私も例に漏れず、例えば医学論文を検索する際、ChatGPTに「こんな論文、ある?」と取りあえず聞くほどに活用しています。もちろん、技術はまだ道半ばであり、一方で、よく指摘されるように、今のChatGPTはうそもつきます。AIが事実に基づかない情報を生成してしまう現象はハルシネーションと呼ばれますが、この問題一つとっても、これを解消するためのさまざまな開発が進められていて、ツールはどんどん進化しています。生成系AIが数年もたたないうちに、「聞いてきたようなうそ」をつくことがなくなるのは間違いありません。
 そうなると、AIは医療にとってますます不可欠なものになります。例えば、皮膚の発疹の患者さんを1万人診た医師がいるとしましょう。この医師にはかなりの知見が蓄積されているといえますが、AIならそういう医師1000人、1万人分のデータをまとめて保有するので、1000万人、1億人分の診療データを学習することが可能です。こうなると人間の医師1人の経験では太刀打ちできません。患者さんだって、100人しか診たことのない人間の医師よりも、1億人のデータを学習したAI医師に診てもらいたいと思うはずです。その考えは今よりももっと定着していくのです。

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