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【科目別入試対策 第1回】『大学への数学』が贈る「医学部への数学」の取り組み方

【科目別入試対策 第1回】『大学への数学』が贈る「医学部への数学」の取り組み方

他の学部と違い、医学部入試に挑戦する場合はかなり長期的に、家族一丸となって受験に取り組むケースが多いです。東大数理英セミナー 代表であり、東京出版刊 『大学への数学・増刊』執筆者でもある奥山 智彦氏に、算数・数学の場合はどの時期にどのような取り組みをするべきかについて解説していただきました。

高校生・既卒生編

入試のスタイルや習熟度で数学の勉強法を確立

学校推薦型入試を受ける可能性があるなら、定期テスト対策はかなり重要です。日常は学校指定の問題集を解き、定期テスト前の準備には平易な入試問題を1単元につき10題~20題程度解いていきましょう。そうすることで共通テストの下準備も兼ねられます。

次に、一般入試(国公立の2次、私大の個別試験)対策について――。

大多数の生徒にとって、これこそが『受験勉強の主要部分』となります。定期テストよりも数段難しいため、一度習った範囲でも適切な問題集を用い、単元をずらしつつ難易度も徐々に上げ、入試日まで継続して数学IA・IIB・IIICの実力を養成します。

手順は以下のとおりです。

【自分で問題を解く→模範解答例を見て理解、暗記の繰り返し】

すでに数学は高成績でセンスがあり、スラスラ解ける、模試の判定に満足、という人は特に心配ないでしょう。目安として、私は教え子に「全統記述模試の科目別全国偏差値で70あれば、その科目はほぼ完成。北海道大学、東北大学、九州大学あたりに余裕を持って合格するには70前後の科目ができれば複数ほしい」と言っています。

もちろん、現実には時間をかけているのに成績が上がらない、と悩む受験生がかなりの割合でいるはずです。

医学部卒業後の進路を大きく分けると「研究中心の基礎」「患者と相対する臨床の現場」の二つです。前者は理学部や工学部出身の研究者に近く、本人の才能やセンスに頼るため、「問題を解くことで頭を良くする」という考えの人が多いようです。ただ、人数的には前者より後者が多く、臨床で数学が必要な理由は、職業人として「検査データを読み取るため」です。

そこでこの先は、数学を専門としない臨床医希望者向けの内容とします。ひとまず才能とセンスは棚上げし、「問題を解くことで頭を良くする」という、中高生がよく陥る発想からも離れます。

解くのに必要な手順、解法をそろえることを重視したい

市販の参考書・問題集はたいてい、易→難に問題を配置しますが、これでは焦点を結ぶ場所が問題側です。そうではなく、受験生の頭の中に焦点を結ぶほうが学びやすいのです。お薦めは「解法を学ぶため、配置」する参考書・問題集です。

例えば「確率」という単元に約20の重要解法があったとします。その中の一つだけを適用すれば解ける問題を20問配置している参考書・問題集がよいのです。東京出版の『1対1対応シリーズ』や月刊『大学への数学』では、ベーシック演習、スタンダード演習、日々の演習が該当します。これらは難易度だけをそろえた20問とは違います。

魚をすくうタモ網(柄の付いた虫取り網の魚版)を想像してください。よくできた網(=手順)なら、魚(=入試問題)を何匹もすくえます。ほしいのは魚でも、手に持ち扱えるのは網です。まず、初仕事は網の作成。個体数(=出題数)と同じ数の網は多すぎて作れず持ち運びもできないので、コイ科、サケ科など同じ挙動をする「種類ごと」に作ります。この網が上記20個の手順です。

その際、コイなら何でもいいわけではありません。コイとしてオーソドックスな動作をする個体を捕獲、観察したうえで作らなければ、後々、網の精度が上がりません。不適切なのは暴れコイ(=難しすぎる問題)、偏食コイ(=奇問珍問)、フナと交雑したコイ(=融合問題)。初学者には見分けがつきません。

しかし、玄人の目利きで典型的コイ(=素直な問題)が並べてあれば、学習者側も解法に集中できます。「問題文の多様な表現」という鱗をはぎ取り、奥に潜む「解法」で腑分けするのです。

国公立大・私立大医学部の表面的な差に惑わされない

分析すれば国公立大、私立大で確かに違いはあります。国公立大はほぼ記述式、医科単科大は数Ⅲが多く、私立大は穴埋め問題が多いなど。

穴埋め問題への対処法は、高3の夏まで国公立大志望者と同様に記述式答案に取り組み、その後、本番までの半年は志望大学の過去問(収録されているなら『入試の軌跡/最難関大医学部』)を確認。記述式が少なければ論理の部分は頭の中で済ませ、手で書くのは式、図だけに減らし、スピードアップを図ります。これは、記述部分を頭の中で確認する必要があるという意味です。論理展開を軽視する、ではありません。

入試直前の半年を除き、出題形式の些末な差異にとらわれて、微調整に悩むより、普通に勉強を進めるほうが無駄なストレスを生みません。加えて「出願先変更の緊迫事態」にあっても柔軟性が増します。

小学生編

丁寧な手作業を心がけ、時間をかけて問題を解く

『中学への算数』(2025年4月号)で今年の中学入試・算数を精査しました。

洛星中の算数の入試問題は「光線の反射」でした。以前、東大入試で正三角形の内側が鏡で、発射された光が反射する問題がありましたが、実は解法は同じなのです。東大は平面であり、洛星中は立方体であるのは小さな差。

桜蔭中の入試問題は「正三角形が正方形内を転がる通過範囲」を問うています。正六角形に置き変えれば、北大の過去問とほぼ同じ手順で解けます。

上記の東大は『東大・入試数学50年の軌跡』を見直すと1997年、北大は『数学ⅢCスタンダード演習』によれば2003年の出題でした。

分析すると、小学算数は計算が平易ですが、相対的に図形は難しく、実は大学入試と解法が重なるものまであるのです。そこで、小6までは「定規を使って図をきれいに描く」、「文字や記号は丁寧に書く」といった練習が必要になります。 もし、難関中学入試が本人の励みになるなら、挑戦をお勧めします。

中学生編

数学の計算問題は「速く正確に」を徹底する

頭と体が成長すると、代数で課されるドリル的反復練習にも耐性がつき始めます。

中1、中2では計算力を養成しましょう。大学入試も点数の半分は計算力、残りは解法が占めているのですから。

中高一貫校であれば中学卒業時に、公立高の進度でいうと高1の範囲まで済ませてしまう傾向にあります。その場合は、学校の授業進度に遅れないようについていくことが大切です。

地域のトップ公立高に進学予定で余裕のある生徒の場合、数学に興味がある人には「方針1」、興味がない人には「方針2」をお勧めします。

【方針1】難易度を上げる

受験の有無に関わらず、難関国私立高校向けの問題集に挑戦することが大切です。『日日のハイレベル演習』など。

【方針2】高1範囲を予習

丁寧な参考書で自習するのが合う子もいます。そんな生徒には『Focus Gold数学1+A』(新興出版社啓林館)を薦めます。かなり厚い参考書です。実は、その厚さが、「自習しよう」という覚悟を呼び覚まします。

※出版社名のない参考書はすべて東京出版刊です。

【出典】『LABbook 医学部受験がわかる 2024年 12 月号』東京出版 , 2024 , P.38-39 .に加筆・修正して転載。

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科目別入試対策

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