【富士学院】高止まりが続く医学部受験 定員減少時代を控え 総合力の強化が不可欠に
医学部受験では、募集人員や志願者数、合格者数の増減などに注目が集まるが、そうした数字の裏にどんな動きがあるのだろうか。医学部専門予備校として大学医学部や全国の進学校から厚い信頼を寄せられている富士学院。その学院長である村田慎一氏に、現在の医学部受験の実態と、合格に向けてのアドバイスを伺った。
依然として高い医師志望熱
仮面浪人や再受験も増加
今年度の医学部入試をどうご覧になりますか。
2026年度の医学部医学科入試は、国公立大学前期日程の志願者数が前年比94.9%と減少したものの、私立大学では増加し、全体としては微増傾向となりました。ただし、表面的な数字だけでは見えない変化もあります。たとえば、新課程入試2年目となる共通テストの志願者数は、全体で1,066人増加しました。しかし内訳をみると、現役生が前年比98.7%と減少した一方、既卒生は同109.8%と増加しており、既卒生の志願者数が増えたことがわかります。
医学部志望でも浪人生が増えたということでしょうか。
医学部受験では、「予備校浪人」だけではなく、大学に在籍したまま再挑戦する「仮面浪人」も増えている印象です。明確な数字は示せませんが、相談に来られる方や、本校の生徒たちから話を聞いていると、そうした傾向を感じます。加えて、医学部以外の4年制大学を卒業してから医学部に挑戦する「再受験生」も増えてきています。
再受験生は学士編入を利用するのでしょうか。
学士編入制度のある大学は限られており、一般選抜での合格を目指し、大学1年からやり直す道を選ぶ受験生も少なくありません。それほど「医師になりたい」という思いが強いわけです。現役生の医学部人気も依然として高く、全国の高校で講演を行う中で、その熱量を肌で感じます。特に女子の志願者が増加している印象を受けますね。経済的な安定性と仕事のやりがい、この二つを背景に、医学部人気は高止まりの状況にあると言えます。
2027年度からは「定員減少時代」に突入
医学部の入学定員は今後どう変化していくのでしょうか。
2026年度入試の定員は前年度と同水準でしたが、2027年度入試からは医学部の入学定員が削減されることが既定路線です。現時点では、大学ごとの細かな定員数は明らかになっていませんが、大きな方向性としては、「地域枠」を中心に進められてきた臨時定員の調整が進む見込みです。
基本となる定員(恒久定員)ではなく、地域枠から削減されていくのですか。
地域枠はもともと「医師不足の地域を支える」目的で設けられた臨時定員で、ここ十数年の医学部定員増の中心を担ってきました。しかし近年は医師の地域偏在が徐々に改善されつつあり、将来の人口動態や医療ニーズの推計などから、国としても「現在の定員規模を維持すべきか」という議論が進んでいます。もっとも、「都市部は減らし、地方は増やす」といった単純な話ではなく、各地域の実情に応じた調整が行われる見通しです。都市部で増員する大学もあれば、地方で減員する大学も出てくるでしょう。いずれにせよ、今後は医学部の定員が増える可能性は低く、定員が減少すれば競争は一層激化し、合格ラインも上がります。医学部受験は「定員増の時代」から「限られた枠をどう勝ち取るか」という側面がより一層強くなっていくと思います。
重要なのは「読解力」「処理力」
『情報』科目にも要注意
今後の医学部受験ではどのような能力が求められるのでしょうか。
新課程入試への移行から2年経過しましたが、明らかになってきたのは「もはや暗記中心の学習だけでは通用しない」ということです。共通テストでは問題の長文化が顕著で、各大学の医学部入試でも同様の傾向が見られます。公式の暗記にとどまらず、文章を正確に読み解く力、必要な情報を整理する力、そして自ら考え抜く力が求められます。特に数学や理科では、難問が増えたというより、限られた時間内で処理すべき問題量が増えています。そのため、「解法は分かっていても時間が足りない」というケースが増加しています。こうした入試に対応するには、基礎力に加え、読解力・思考力・処理スピードといった「総合力」を底上げすることです。加えて、『情報』科目も見逃せません。導入当初は配点がない、あるいは比率の低い大学も多く、高校側でも軽視されがちでしたが、現在では配点の見直しが進み、無視できない存在となっています。指導環境にも若干の差があるようです。私立大学医学部の一般選抜で『情報』が課されるケースは今のところありませんが、共通テスト利用や国公立志望者は、入試科目としての意識をしっかり持ち、得点できる対策を始める必要があります。対策をした人、しなかった人で今後、差のつく教科の一つになるかもしれません。
医学部の出題傾向や問題難度は大学ごとに異なる
医学部受験では、大学別の対策も重要になってくるのでしょうか。
医学部受験を難しくしている要因の1つが「大学ごとの差」です。私立大学医学部では、出題傾向・難度・配点比率等々が大学ごとに大きく異なります。「英語200点・数学100点・理科200点」の大学、「英語150点・数学150点・理科200点」の大学、「4科目均等配点」の大学など、配点次第で学習バランスや受験戦略がまったく違ってくるため、一般的な模試の判定はあまり当てになりません。「A判定でも不合格」「E判定から逆転合格」も医学部受験では決して珍しくないのです。志望校によって出題傾向・配点・求められる力が異なるため、模試の偏差値だけで安易に合否を測ることはできません。
国公立大学でも、かつては共通テスト対策をしっかり行い、二次試験で高得点を取れば合格できましたが、近年は二次試験に医学部独自の問題を課す大学が増え、志望校に合わせた個別対策が必要不可欠になっています。当然、大学毎の目標は変わりますが、合格ラインとしては、国公立大学は共通テスト目標9割の得点率、私立の一次試験は7割、大学によっては5割程度で合格できる場合もあります。また、模試偏差値で見る合格ラインが高い大学ほど、問題の難度が高いとも限らないのです。ただし、国公立は受験科目数が多く、全科目で高得点を取る力が求められることと、学費が私立に比べてかなり安いことを含め、総合的に学力の高い層が集まる傾向があると思います。
医学部受験は医師になるための「就職試験」という意識を
医学部受験を目指す現役生と浪人生にそれぞれアドバイスをいただけますか。
現役生は「学校推薦型選抜」が重要な選択肢となります。大学入試全体で推薦型選抜の比率は高まっており、医学部でも推薦枠は年々増加傾向にあります。ただし国公立大学の場合、推薦枠の多くが評定平均4・3以上などの基準を設けていますので、高校1年時から定期テストを大切にし、評定を意識することが大切になってきます。「高校1年時からすでに医学部受験は始まっている」という感覚を持ってほしいですね。出願条件も「現役生のみ」「一浪まで可」「二浪まで可」「年齢制限あり」など大学ごとに大きく異なるため、早めの情報収集が大切です。浪人生は、推薦枠の増加で一般選抜枠が減少するなか、心理的な焦りだけでなく新課程入試への対応という重圧もあるでしょう。大切なのは「気持ちで負けない」ことです。医学部受験は長期戦なので、知識量だけでなく、精神的な粘り強さが問われます。自分に合った受験する大学の選定と現実的な戦略を立てること、そして不安に飲み込まれないモチベーションを維持することが大切です。
医学部を目指す上で、皆さんに伝えたいことを一言お願いします。
医学部受験は単なる大学受験ではなく、医師という職業を目指す「就職試験」です。そのため全大学で面接試験が課され、人間性も重視されています。医師に必要なのは学力だけではありません。社会に関心を持ち、課外活動を通じて、多様な価値観を理解しながら患者に寄り添える力を磨いてください。皆さんの夢が叶うことを心から願っています。そしてわからないことがあれば、何でも富士学院に相談に来てください。