【順天堂大学系属理数インター中学校・高等学校】医療人としての資質を磨く 「医学進学コース」を展開
入試の種類が日本一多い中学校として知られる順天堂大学系属理数インター中学校・高等学校は、入学してから学力を飛躍的に伸ばす学校としても高く評価されている。2024年には順天堂大学系属校となり、翌25年度には「医学進学コース」を設置している。同コースの狙いと教育の特色について、進路支援部長の清水雅史先生に伺った。
理念の一致から誕生した
高大連携の新たな取組み
医学部受験は日本で最も競争が激しい進路の一つであり、予備校はもちろん中学・高校にさえ医学部進学コースを設置するケースが目立つ。しかし宝仙学園が立ち上げた「医学進学コース」は、少し異なる立ち位置をとる。端的にいえば、医学部合格だけをめざすのではなく、医療人に求められる資質を中高6年間(または高校3年間)でじっくり育てることをめざしているからだ。
起点は2023年、順天堂大学との高大連携協定まで遡る。
「宝仙学園の『…人を造る』という建学の精神と、順天堂大学の他者を思いやり慈しむ心としての学是『仁』に通じるものがあり、一般的な高大連携よりも踏み込んだ系属校へと発展したのだろうと考えています」と清水雅史先生は振り返る。
当時の順天堂大学学長からは、医学部入試を突破したいわゆる〝受験エリート〟が、臨床の現場で立ち往生する場面が散見されるという、切実な声も届けられたという。刻々と変化する医療現場やチーム医療での協働などに対応できる、多様な資質を持つ医療人材が求められているという問題意識でもあった。この点においても、多彩な入試方式で多様な資質を持つ生徒を受け入れてきた宝仙学園の方針と重なった。
当初は、シミュレータ体験や医学部教員による講義、同校出身の医学部生との交流など、一般的な高大連携からスタートした。しかし、こうした活動を重ねるうちに、「点」の交流ではなく、中高段階から医療人を育てる「流れ」を作る必要があるとの認識が生まれてきた。
「経営も資本も別法人ですから、あくまでも理念的な部分でつながっているというイメージを双方が共有していました。であれば、中高段階から医療人を育てていくことも必要だろうということで、2025年度に本コースを立ち上げ、中1、高1で募集をはじめました」(清水先生)
なお、同コースは順天堂大学医学部に進学するためのコースではない。同コース出身者のみに開かれている「順天堂大学医学部系属校選抜」という特別な入試にチャレンジできるというメリットはあるものの、国公立大学や他の私立大学の医学部への進学も可能になっている。めざしているのは、あくまでも医療人材としての高い資質の育成にあるからだ。
「本人の希望がベースにありますから、必ずしも全員が順天堂大学をめざしているわけではありません。そのため、進路指導においては本人の希望に応じて支援する形になっていくと思います」(清水先生)
数学・理科の取り出し授業で
ハイレベルな学力を育成
同コースのカリキュラムは2本柱になっている。1つは医学部受験に対応できる「教科学習」で、最大の特色は、数学と理科で「取り出し授業」を行うことにある。同コースの生徒は、この2科目だけは通常のクラスを離れ、少人数で学ぶことになる。検定外教科書なども積極的に活用しながら、かなりハイペースで先取り学習を進めていく。
「中2までに中学範囲を終え、高2終了時までに高校課程のすべてを修了し、高3は受験を見据えた演習中心の学習に移行する予定です」(清水先生)
高校になると同コースの生徒はAdvanced理系クラスに所属するが、中学と同様に、数学・理科は別授業だ。高1で全員が物理・化学・生物の基礎を履修し、高2以降は化学必須となり、物理か生物を選択する。
なお、英語については、高2終了時点で英検®準1級レベルに達することを目標としており、習熟度別の授業で対応している。現時点では医療英語などに特化した同コース専用のプログラムはないが、今後は季節講習などでの実施も計画されている。
医師への「志」を育む
必修の「医師志望論」
教科学習と並ぶもう1つの柱が、医師への「志」と人間性を育む「医師志望論」で、同コースの最も特長的な取り組みといえる。
「なぜ医師になりたいかを聞くと、『親が医師だから』『ドラマを見てかっこいいと思ったから』という答えが返ってきます。出発点はそれでいいのですが、問題はそこから先へなかなか膨らんでいかないことです。そこで、本人なりの医師への志望を、中等教育段階でじっくり育み高等教育につなげることが大切ではないかと思い、『医師志望論』という授業を構想しました」(清水先生)
「医師志望論」は中2からスタートし、中学のうちは国語の授業の中に週1回組み込む形で実施している。アクティブラーニング形式で、社会の事象や文学作品を題材に、まずは自分で考え、仲間と議論し、自分なりの考えを深めていくことになる。
「中2では愛や死といった普遍的なテーマを深く考えることが中心です。今計画しているのは、森鴎外の『高瀬舟』を題材に安楽死の是非をめぐる議論へと生徒を誘っていくような授業です。中3では倫理観や人間観など『正解のない問い』へと発展させていきます。また、同じテーマを中学と高校の両方で扱い、自分の視点の変化を実感するような仕組みも考えています」(清水先生)
高校段階になると独立した授業科目となり、ユニット制(年間3ユニット、3年間で9ユニット)で展開される。「なぜ医師を志望するのか」「現代医療の課題(地域医療・医師の偏在)」「災害時医療とトリアージの倫理」「ゲノム編集・生殖医療」など医療が直面するリアルな問いを掘り下げていく。
これらの座学とフィールド研修がセットになっているのも高校の「医師志望論」の特色だ。たとえば高1の「地域医療」のユニットでは、新潟県を訪問し、新潟大学の医学部や脳研究所、魚沼基幹病院などで現実の課題と向き合うセミナーを実施している。今年度の高2で取り組む「生殖医療・生命倫理」のユニットでは、スウェーデン・ストックホルムのカロリンスカ研究所を訪問し、特別講義を受ける計画も進んでいる。
「こうして積み上げた経験は受験期に生きてきます。医学部入試の小論文やMMIなどの面接は、知識だけでは対応できません。本物の医療人を育てるための『医師志望論』で3〜6年かけて磨いてきた思考と言語化の力は、結果的に入試にも直結すると考えています」(清水先生)
「系属校選抜」は
進路選択の1つに
同コースに入学するには、「医学進学入試」を受験する必要がある。算数と理科の2科入試で、2027年度の募集定員は第1回が10名、第2回が15名と絞られているが、「4科入試」「新4科特別総合入試」「適性検査入試」の上位合格者も、希望すれば同コースに進める道が開かれてはいる。
一方で、出口の1つ、順天堂大学医学部への「系属校選抜」入試はかなりハードルが高い。出願資格は評定平均値4.7以上で、一次試験(小論文・面接)をクリアし、二次試験(共通テスト)で85%以上の得点が求められている。しかも合格者は入学を確約する必要がある。
国立大医学部にも手が届くレベルであり、一般入試との選択を迷う生徒も出てくるはずだ。そのため、最適な選択ができるよう、医学部予備校と連携した大学入試研究会を、生徒・保護者向けに実施し、最新の情報を届ける予定になっている。
「志を高く持ち、自分がなりたいものになっていくことを支援するのが学校ですから、少しでも医療分野に興味・関心があって、3年間あるいは6年間かけて人間的に成長しながら仲間とともに医師をめざしていきたいと思っている小学生や、そういう教育方針をお持ちのご家庭の子どもたちにぜひご入学いただけたらと思っています」(清水先生)
※英検Ⓡは、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
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