【広尾学園中学校・高等学校】学術の本質に迫る研究活動と 医療の最前線に触れる体験で 医師・研究者に不可欠なマインドを育む
広尾学園中学校・高等学校では「本科」「インターナショナル」「医進・サイエンス」の3コース制を導入し、生徒一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育を実践。ユニークな教育方針と進学実績で注目を集めている中高一貫の共学進学校だ。2026年度の大学入試では、医学部医学科に過去最高の109名(現役生79名)が合格し、昨年の合格実績を更新した。医進・サイエンスコース(以下、医サイ)統括長の石田敦先生にカリキュラムの成果について伺った。
大学との新プログラムが始動
医学部の学びがより身近に
順天堂大学との高大連携協定で、新たな動きがあったと聞きました。
石田 順天堂大学とは、これまで10年以上連携して活動してきました。その実績を踏まえ、正式に連携協定を結び、昨年度から新たな連携の試みとして「JU★STARプログラム」が始動しています。
「JU」は順天堂を表し、「STAR」はScientific Training in Advanced Research の略です。これは本校の高校生若干名を順天堂大学医学部が一人の「研究者」として迎え入れ、大学教員につき、個別に指導を受けながら医学生に交じって医学研究を行うというものです。
解剖学・生体構造科学講座と生化学第二講座では、厳正な選考のもと各2名を受け入れていただきました。2か月の試験期間を経て、教員と生徒双方の合意を得て、研究は年度末まで継続します。高校に在籍しながら大学医学部で本格的な研究ができるという、高度なプログラムが実現しているのです。
必修の「研究活動」
充実度は大学・大学院レベル
医サイのカリキュラムの特色について教えてください。
石田 最大の特長は、中高を通じて「研究活動」を必修化していることでしょう。授業名が中学では「理数研究」、高校では「学術研究」と異なるため、学内では「研究活動」と総称しています。いわゆる探究型学習ですが、〝夏休みの自由研究〟とは格段にレベルが違います。掲げるコンセプトは「世界のまだ誰も答えを知らない問題にチャレンジしよう」。科学の最前線での挑戦がテーマですから、大学や大学院の研究室で行われるゼミをイメージするとわかりやすいかもしれません。
「研究活動」は具体的にどのように行われるのでしょうか。
石田 研究分野ごとにチーム分けをします。中学では「医療」「分子生物」「環境科学」「現象数理」「数論」の5分野を扱い、高校ではさらに「植物」「理論物理」「情報・メディア」の3分野が加わり、計8分野となります。主に2・3人で一つのテーマに取り組みますが、なかには個人で取り組む意欲的な生徒もいます。
研究テーマは自分たちで設定するのですが、まずテーマを見つけるのが一苦労です。興味のあるテーマに関係する英語の原著論文の購読からスタートしますが、「世界でまだ誰も答えを知らない問題にアプローチする」のですから、現時点で研究がどこまで進んでいるのか、その最前線を見極めなければなりません。そのうえで仮説を立て、何を明らかにするのかをグループのメンバーや担当教官と話し合いながら進めていきます。
最近では、「先天的に歯が生えない症例」があることを知った医療チームの生徒が、最新の論文を調べ、歯の形成を促す遺伝子や抑制する遺伝子があることを知り、どのような遺伝子を発現させればいいかという研究に取り組んでいます。このように「誰も答えを知らない」問題に取り組むので、教員も「共に学ぶ」スタンスで伴走します。
学術の本質を極め
学び方と学びの面白さを知る
中高生で大学・大学院レベルの研究に取り組めるのはなぜでしょうか。
石田 生徒たちの研究活動をサポートするために、可能なかぎりの学習環境を整えています。医サイ専属の教員17名に加え、非常勤講師18名が研究活動を指導・支援しているのです。非常勤講師は、民間企業の現役の研究者や、退官・退職した大学教授や企業の研究者の方たち、そして本校を卒業し大学で研究する修士や博士です。「後進の若い人たちを育成したい」「研究の醍醐味を知ってほしい」という純粋な気持ちで労を惜しまず指導してくださっています。
また、本学を卒業した医学生や医師も、さまざまな場面で中高生の現役生をサポートする体制があります。そうした人たちの協力を得られやすいよう、中学の「理数研究」、高校の「学術研究」の授業は、すべて土曜日に集約しています。生徒たちにとっては、研究の最前線を知る人たちから直接指導を受けられるため、モチベーションが高まり、それが成果にも結びついています。
それぞれの研究成果はどのように発表されるのでしょうか。
石田 研究の成果は、本校の文化祭である「けやき祭」や、年度末の「成果報告会」、大学等が主催するコンテスト等で発表されます。学会において一般の部で研究者と同じ土俵で発表することを目標としており、そこに到達する生徒もいます。
各大学の医学部との連携で
医療の最前線を実感する
医学部受験についてはどのような取り組みをされていますか。
石田 医サイ生の約3~4割が医学部志望ですが、彼らにとってのゴールは医学部進学ではありません。医学部進学は医師という職業選択とほぼ同義ですから、彼らが目指すべきは「医師になること」であり、医学医療を通して患者さんや社会に貢献することです。そのためには中高生の段階から医師という職業や現代の医療についての理解を深め、必要な資質や能力を知る必要があります。自分に医師の適性があるか、みずからに問いかけ、将来どのような医師になりたいのか、自分のキャリア観をある程度固めておかなければなりません。〝医学部受験のミスマッチ〟を事前に防ぐために、生徒たちには医師として働くことの意義や難しさ、やりがいなどを自分事としてしっかりとらえてほしいのです。
そのために医サイが掲げているもう一つのキーワードが「医療の最前線に触れる」です。中高生の時点で、医師や医療現場に触れられるように、多くの大学医学部との連携・提携を結んでいます。
どのような連携なのでしょうか。
石田 たとえば、大阪医科薬科大学の総合診療医の先生に毎年講演をお願いしているだけでなく、夏休みに大学と連携した地域医療実習を行っています。これは、本校生徒の有志数名が大阪医科薬科大学の医学生と泊まりがけで兵庫県の町や村を回り、医療資源に乏しい地域医療の実情を肌で体験するというもの。本校の生徒の多くは都会育ちですから、過疎と高齢化が進む地域の苛酷な現状に大きな驚きを受けるようです。この地域医療実習がきっかけで総合診療医を志した生徒もいました。
他にも、公衆衛生の分野で睡眠時無呼吸症候群の研究に取り組んでいる生徒が、年度末の「成果報告会」で研究発表したところ、順天堂大学の先生から共同研究のお誘いを頂き、患者や発症リスクの高い人が訪れる機会が多いと予想される中華食堂に生徒達自身がコンタクトを取り、リスク診断ができるアンケート付きポップを設置し回答を集めて研究を行ったという事例もあります。
最後に、医学部受験の対策について教えてください。
石田 医サイの教員たちはこれまで多くの医学部志望生徒を指導し、合格に導いてきました。筆記試験の対策はもちろん、入試直前に行われる模擬面接もかなり実践的で、医学部に合格した生徒たちからは「面接の練習が役に立ちました」とよく言われます。また、近年は推薦入試や総合型選抜を行う医学部が増えましたが、本校の「研究活動」は高校での活動実績として高く評価されることが多く、たとえば、東京科学大学(旧東京医科歯科大学)医学部医学科の推薦入試では、毎年全国で5名しかいない枠に対して過去5年で4名の合格者を輩出しています。また本校では、研究活動を通して上級生と下級生の縦の関係が密であり、自身の志望する大学に合格した先輩から貴重なアドバイスを受ける機会も多く、それが本校の合格実績にもつながっているようです。医学部進学には高い学力だけでなく、医学・医療に関する知識と理解、医師になるというビジョンと強い覚悟が必要です。日本、そして世界の医学・医療の未来を担うみなさんとの出会いを楽しみにしております。
統括長 石田 敦 先生
広尾学園中学校・高等学校